BUNAGAYA HERITAGE
ホーム お問い合わせ
活動報告




►フィールドワークトップ

フィールドワーク報告
法人として活動する以前の報告





活動報告

トーイユ(タイワンキンギョ)の産卵

強烈な太陽光が “まぶしい” というより “痛い” 季節が始まった。 6月下旬、本土より一足先に沖縄地方は梅雨が明けた。本格的夏の到来だ。
突然だが、夏といえば" “ 恋 ”の燃え上がる季節。『 ひと夏の恋 』とか『夏の恋人』なんてフレーズがマッチしている・・・。と思うのは私だけかもしれないが「浜田省吾」の曲『 二人の夏♪ 』あたりは何ともセツナく、透明感があってマイベターソングだ。夏の夕暮れ時ビール片手にこの曲を聞きながらそっと目を閉じるとハイスクール時代に引き込まれて行く。遠い夏の日の想い出~~まだ車も無く、彼女と二人バスで行ったサンセットに染まる西海岸のビーチ。手も握れなかった。潮騒だけがが耳元にやさしい。「あの子は今頃どうしているんだろう?」・・・~と、心地よく哀愁のひと時に浸っていると、鼻っ柱にいきなり「ガツン!」 。突然の襲撃で引き戻される。当家のジャジャ娘のアンパンマンパンチを顔面に食らった。顔中ご飯粒だらけでゴキゲンの今の彼女はなんとも手厳しいのだ。


話がおかしくなってしまったが、本題に入る。まぁそんな暑い夏なので池の水温もグングン上がり、多くの淡水魚にとって春先から始まった『 恋の季節 』はここで佳境に入る。繁殖最盛期だ。今日はブナガヤ飼育所で発見した 「 トーイユ の愛の巣 」 をご紹介しよう。

これは自然界でのトーイユの棲む湿地。平地の止水域を好み、浅く水草のビッシリ茂った貧酸素な環境でも繁殖するたくましい魚だ。この池は夏場の渇水時には水かさが僅かになる。
(保護のため写真は加工してあります)




和名:タイワンキンギョ(スズキ目 ゴクラクギョ科 英名 Paradise fish )は沖縄の方言で「トーイユ」とか「トウギョ」といい、漢字で「唐魚」「闘魚」が当てられている。平地の止水の池や流れのゆるい川に棲息している。繁殖期のオスは気性が荒くメスをめぐり激しく決闘する。一見、本土に生息する「チョウセンブナ」によく似ているがヒレの形が違うので区別できる。トーイユはこのチョウセンブナの近縁種で、ペットショップで売られている「ベ タ 」 もこの仲間。外国では中国南部、台湾、インドシナ半島、日本では沖縄本島をはじめ琉球列島の限られた島にのみ棲息する在来種。在来種と言ったが実はこの点には諸説異論がある。時は15世紀、沖縄は「琉球王朝時代 」に今の中国やアジア諸国と盛んな交易を行っていた。トーイユはその頃から王都首里士族の子供たちの間では愛玩魚として広く飼われていたようだ。明治12年の廃藩置県(琉球処分)によって王朝が幕を閉じるまで士族達は転勤や懲罰など様々な事情で首里から遠く離れた僻地に移住した。研究者による沖縄におけるトーイユの分布地がこの士族の移住地と一致するらしい(参考:『沖縄の川魚 』 幸地良仁 著 沖縄出版)。この事からトーイユはもともと沖縄に棲息していたのではなく数百年前に交易者によって持ちこまれたのではないかというのだ。まぁ学術的な知見はべつとして数百年は経過しているし、最近のアロワナやプレコが沖縄の川中でにわかに市民権を得ようとしいている現状から比較しても、その昔トーイユオーラセー(トーイユの決闘遊び)があったと古文書に残されているくらい沖縄の文化に浸透しているトーイユはやはり在来種といって良いのではないだろうか。


                                赤丸内の白い部分が巣                                全長約10cmのメス


ブナガヤ飼育所のトーイユの水槽(上左)と、トーイユの親魚(上右)。1m×90cmのプラスティックケースに約6匹程飼育している。“6匹程 ”と言ったのは正確に数えてなく、昨年の産卵時、卵を移し入れたままで当時数百匹の稚魚達が泳いでいたがそのまま放置し、あれから1年後今回の「巣 」を発見しあらためて水面から魚影を数えてみた程度のため数は不確か。(注:ブナガヤ・ヘリテージではヤンバル養殖池にてトーイユの養殖を試験実施しています。)親魚の写真はメス。トーイユは興奮したり暗がりの中に居たりするときオレンジ色の縦縞模様が浮き上がり尾びれの色も濃くなり体全体が発色する。特に繁殖期のオス同士は激しく縄張り争いをするが、そのときの体色はとても美しく、古来琉球の人々がこの魚に魅了されたのがわかる。成長した個体の性別はオスメスで尾びれの長さや平常時の体色の派手さ(オスが派手で尾びれが長い)でわかる。

水槽の隅に溜まった浮き草の間に白い泡の塊、ブクブクっとしているものがトーイユの“ 愛の巣 ”である。見た目に“ 愛の巣 ”というロマンチックな印象ではないのでただの“ 巣 ”と言い替えましょう。この巣を作るのはオスの仕事で、水面下では他の魚やライバルのトーイユが近づくと激しく撃退する。口から出る粘性のある液を使いひとつひとつ泡を作りためていき、ある程度完成するとメスを誘い気に入ってもらえればメデタク交尾・産卵となる。

産卵後の巣の管理もオスの役目で、新しい泡を作って壊れていく巣を修理したり、巣から落ちてくる卵を泡の中に入れ戻したりでせわしく働く(メスは卵を産むだけで子育てはしない)。また他の魚が巣の近くに寄ると神経質に撃退するが、求愛の為にあれほど必死に誘惑したメスに対しても同様で、卵を産んでもらった直後には「絶縁 」され、恋は刹那に終わる。

 

トーイユの卵の孵化は驚くほど早く、2日~4日ではほとんどが帰るが、この水槽は手狭なのでこのまま放置すると孵化した稚魚は成長するまでに他のトーイユに食べられてしまうのでティースプーンで泡ごと卵をすくいだし他の水槽に移して孵化させる。近年、棲息地の減少によりトーイユは身近な水辺環境では見られなくなった。またわずかに残った生息池でも環境汚染や乱獲で個体数が激減していて絶滅が心配されている。沖縄には本種の愛好家も多く丈夫で人なつっこくて飼育していて楽しい。しかし以前のようにどこにでもいるという状況ではなくなった今、野生のトーイユの捕獲は何がしかの制限の下で行われることが望まれる。
(※トーイユことタイワンキンギョは環境省レッドデータブックでカテゴリー絶滅危惧IA類(CR)に分類されています)


 生まれた ばかりのトーイユの赤ちゃん。数匹をプラケースに入れて事務所で観察することにする。できれば成長の様子を次回にお伝えしたいが、その前に“ 命名 ” しよう。 え~・・・っと「 トーイユ 」だから 「 トウちゃん」ってのはどうでしょうか !?。 アサハカと言ってはならない、シンプルイズベストだ。「トウちゃん」「とーうちゃん」いい響きだ。それに成長してもしメスだったら「カーちゃんに」改名すればいいし?。ともあれ大切に見守っていきたい。



PAGE TOP